中小、ベンチャー企業の資金繰りを改善!「電子記録債権」を使ったFintechサービス【後編】
今回は、Tranzax株式会社様の新しいサービスと、今後のビジョンなどを伺っていきたいと思います。
前編はこちら↓
中小、ベンチャー企業の資金繰りを改善!「電子記録債権」を使ったFintechサービス【前編】
目次
新しいサービス「PayForward」
―「PayForward」というのは具体的にどのようなサービスなのでしょうか?導入のメリットも教えてください。
「PayForwardは中小、ベンチャー企業のためのファクタリングサービスです。メガバンクのファクタリングと違うのは、中小企業も活用できるということです。中小企業は、発注企業である大企業に対して有する売掛債権を電子記録債権化し、それを元に資金化できます。また、その点にもメリットが2つあります。
1つ目は、中小、ベンチャー企業の支払業務を代行できる点です。
通常、一次受企業の中小企業はファクタリングで資金化したのち、その下の二次受企業に支払います。それを、一次受企業を挟まず、直接二次受企業に支払うことができる仕組みになっているので、一次受企業の振込事務をなくすことができます。また、二次受企業にとっても早期資金化が可能になるというメリットがあります。
2つ目は、全体の金利を下げることができる点です。二次受企業が一次受企業に対する売掛債権を金融機関に持っていってファクタリングしようと思っても、金利が上がってしまいます。しかし、PayForwardのスキームを利用すれば、支払いを行うのは発注企業である大企業なので大企業の信用で割引ができ、金利が下がります。つまり、大元の大企業の金利で二次受企業が融資を受けられるようになるのです。
発注企業としてもPayForwardを導入することにより、手形レスを推進することができます。」
―振込事務の手間も省け、低い金利でのファクタリングが可能なんですね。
「はい。支払い期限は、電子記録債権化してから120日後までです。一次受企業は二次受企業に120日後までに払えばいいのですが、支払いが中小企業だとファクタリングしてもらえない可能性があります。
120日の手前で現金化しようとしたときに、大企業の信用で割り引いた形にした方が当然金利は安くなります。一次受企業の親事業者(発注企業の大企業)の信用で、二次受企業に支払うことで金利が下がるというサービスです。」
日本の金融を変えるFintech
業務効率化はIT化が原理原則
―POファイナンスやPayForwardはFintechサービスにあたると思いますが、なぜ金融業界においてFintechが重要なのでしょうか?
「手間がかかりすぎてこんなことできない、ということを効率化するにはIT化が原理原則です。
中小企業への融資を決定する方法について言えば、アメリカは融資先企業の売り上げを全部担保に取って契約します。しかし、日本はそれが法律上難しい。
アメリカの中小企業はほとんどこの仕組みを使っています。毎月の売り上げをモニタリングして、それに合わせて融資するお金を増減させます。金融庁が主張する事業性評価ですね。しかし、これには相当の手間がかかります。
この方法で融資を行おうとすると手間がかかるので、アメリカの銀行では1人の融資担当者が10社程度しか担当しません。それに対して、日本の銀行は1人の行員が中小企業を数十社以上担当することも多いです。担当する企業数が多いうえに、事業をモニタリングするタイミングが年1回の決算書が確定するタイミングくらいしかないので、中小企業の今の業況を把握がすることができないのです。
毎月の審査をやろうとしても、それに必要な決算書などの書類がありません。中小企業の売り上げを管理することは難しく、それを毎月実施しようとするとものすごく手間がかかります。それをシステム化して毎月実施する、ということがFintechとなります。
キャッシュフローファイナンスという考え方
「当社では、バランスシートではなく、キャッシュフローを改善する「キャッシュフローファイナンス」で新しい金融を作ろうとしています。そのためには相当なIT化が必要で、中でも電子記録債権が有効だと考えています。
売掛金を担保にするには法務局への登記が必要ですが、手続きが面倒なので日本ではあまり普及していません。
しかし、POファイナンスを使えば、売掛金を担保にできます。これをベースに電子発注を電子記録債権と組み合わせて、受発注の段階からお金を借りられるようにしていく。これが進んだら、ECを全部電子記録債権に、ということも将来的に考えられます。日本の金融を変える仕組みだと考えています。」
今後のビジョン―日本の経済を本当に良くするためには
―最後にTranzax株式会社様の今後の展望、ビジョンを教えてください。
「やはり中小、ベンチャー企業!ここにお金が回らないと日本の経済はよくならないです。中小、ベンチャー企業を成長させることが日本にとって最重要です。そのために、新サービスを開発していきたいです。
労働時間当たりの生産性が日本を100とするとアメリカは162、ドイツが156、スペインでも124と、他国と比較しても生産性が低く、全く構造的に儲からない国になっています。これを何とかするには、大企業だけではなく、日本の雇用者の7割を占める中小企業の頑張りが必要です。
また、日本のGDPは単純な計算で考えてみると、国民1人1日につき、現在よりも300円分を余計に消費すれば3%成長する計算になります。今の日本に必要なのはお金を使うことで、これ以上貯金する必要はないです。最低賃金を上げないといけないですし、消費税増税はとんでもないです。教育無償化もやるべきです。
金融政策も同じで、国民にお金を使ってもらうには、中小企業にお金を回さなくてはいけません。中小企業にお金が回るようになると、資金がなくて、ずっと設備投資をしていなくて古くなっている設備に、投資をせざるを得ないでしょう。いくら大企業にお金があっても投資先がないなどと騒がれていますが、中小、ベンチャー企業には設備投資というお金の使い方があります。お金に困っている企業にお金が回れば投資をするでしょう。そうすると経済がよくなります。それを促進することをやっていきたいと考えています。」
まとめ
小倉様、大変ためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。
電子記録債権は日本の金融のあり方を変えるうえで重要なポイントであり、受注段階で資金化できるPOファイナンスや、中小、ベンチャー企業でも低い金利でファクタリングができるPayForwardは電子記録債権を活用した画期的なサービスです。中小、ベンチャー企業が今までより簡単に資金調達ができる基盤が整うことで、企業の成長の後押し、さらには日本経済の活性化にもつながっていくと感じました。
資金調達に困っているベンチャー、中小企業の経営者の皆様、ぜひ本インタビューを参考にしていただき、資金繰り改善の参考にしてみてください。
インタビュー前編はこちら↓
中小、ベンチャー企業の資金繰りを改善!「電子記録債権」を使ったFintechサービス【前編】
- 会社名
- Tranzax株式会社
- 住所
- 〒105-0001東京都港区虎ノ門1-12-9 スズエ・アンド・スズエビル6階
- 事業内容
- 電子記録債権を使った各種ファイナンスサービスの提供
「サプライチェーンファイナンス」 「POファイナンス」
「PayForward」 - URL
- http://www.tranzax.co.jp/index.html