【セミナーレポート】アナログ業務を効率化して売上UPを実現する方法~老舗洗車用品メーカーの社長が語る、BtoB EC成功のポイント~
2023年3月7日に、「アナログ業務を効率化して売上UPを実現する方法~老舗洗車用品メーカーの社長が語る、BtoB EC成功のポイント~」と題したセミナーを開催しました。PaidとBカートを導入しているシュアラスター株式会社の取締役社長 塩崎様をお迎えし、BtoB EC成功のポイントを伺いました。今回はそのセミナーレポートをお届けします。
ぜひECサイトの構築でお悩みの方は、参考にしてみてください。
目次
EC を立ち上げようと思った背景
シュアラスター株式会社の事業内容と塩崎様の経歴
シュアラスター株式会社は70年以上続く洗車用品の老舗メーカーです。塩崎様は2011年に営業本部長として入社し、当時からバックオフィスや開発等も統括しながら、会社全体の動きもコントロールされていたそうです。その後2019年に取締役社長となり、経営面も見ていらっしゃいます。
EC化の推進を意識した背景① アナログな業務の改善
塩崎様はシュアラスターに入る前は広告代理店や制作プロダクションといった、どちらかというと受注産業の業界にいらっしゃいました。そして初めてメーカーの業界に入り、受注業務や社内申請、経理処理といった企業活動におけるアナログ業務の多さに驚いたそうです。
しかも人間がやっていることなのでヒューマンエラーも起こります。伝票やアーカイブの保存も非常に煩雑になっていて、例えば過去を振り返ろうとなった時にも非効率的で、そういったことが当たり前のように行われていているのがカルチャーショックだったのだとか。
そうした状況に対し、塩崎様はデジタル化することであらゆる業務が改善されると漠然と思っていたそうです。
塩崎氏「メーカーというのは想像以上に単純作業の実務が多いです。毎日、あるいは毎シーズンごとに発生する同じ業務内容の繰り返しであれば、機械が得意とすることなので、EC化によって何か解決できるだろうなと。また機械に任せられることは機械に任せることで、ヒューマンエラーも防ぐことができます。
もちろん営業としては売上を上げないといけませんが、アナログな世界だと売上を上げれば上げるほどバックオフィスは疲弊していってしまいます。だったら業務が増えた分だけ人を増やすのかというと、今時そんなナンセンスな判断はないですからね。
また受発注のシステムは当時から導入していましたが、この基幹システムがインストール型で、サーバールームまで自社にありました。サーバールームを見たときに、これはやばいなと。これが止まったらどうするのかということと、その保守メンテナンスにもそれなりに費用が掛かっていましたから、非常にナンセンスな企業運営だと思われるかもしれませんが、意外にそういう管理をしている企業が多いのではないかと思います」
EC化の推進を意識した背景② 業界の縮小化と販路の拡大
業務の効率化というのは社内における課題ですが、業界全体を見てもEC化を進めるべき要因があったと言います。
洗車用品などを扱う自動車のアフターマーケットと言われる業界は決して成長産業ではなく、どちらかというと右肩下がりの産業なのだそうです。そうなるとどうしてもプレイヤーが減っていくわけですが、メーカー、問屋、小売店が存在する商流の中で、まず存続が難しくなるのが問屋です。
大手の販売店に対しては直接商品を卸し、それ以外の小さな店舗さんに対しては問屋を通して取引をしていた同社。問屋が廃業してしまうと、その問屋から仕入れていた小売店さんは仕入れができなくってしまいます。そこで、シュアラスターの商品をどこで仕入れられますかという問い合わせが非常に増えていったそうです。
塩崎氏「そこでシュアラスターと取引がある他の問屋を紹介するも、新規で口座を開くのは問屋にとってリスクがあるので、なかなか新規の取引は難しいのが現状です。そこで弊社に直接取引できないかという問い合わせがくるのですが、新規でしかも小さい小売店さんの場合、弊社にとっても掛売りで取引するとなるとリスクがあるためお断りしていました。
さらに車だけでなくバイクや自転車といった親和性のある事業ドメインにも拡張することを考えていましたが、この場合も同様にリスクの問題がありますし、取引先が広がることで業務量が増えると内勤は疲弊してしまいます。
こうした課題がある中でECサイトの開発を依頼している会社からBカートとPaidの紹介をもらい、両サービスを使うことで、あらゆる懸念や課題が解決できるのではないかと感じました。 BカートでEC化することによって取引先が増えても業務量が増えず、さらにPaidを使うことで新規顧客ともリスクなく取引ができるのではないかと」
EC化におけるハードルと解決策
社内の課題(反対の声)
EC化は大きな業務改革となるため、現場からは反対の意見が上がることも考えられます。シュアラスターでも塩崎様以外は反対の意見しかなかったそうです。
塩崎氏「人は変化することに対してストレスを受けますし、拒絶反応も起こしやすいです。特に経営者や管理職の方は感じられたことがあるのではないでしょうか。
先ほどもお話しした通りメーカーのバックオフィスは特に単純作業が多いので、システムを入れ替えて今やっている業務が変わるとなると、それが恐怖でしかないのです。
業務が効率化されれば“業務がなくなる”のではなくて、“違う業務に時間を費やせる”という風に前向きにとらえてくれればいいのですがなかなか難しいのが現状です。弊社でのEC化はそんな状況でスタートしています」
そうした反対意見に対する解決策
EC化を進めている方やこれからEC化を検討しようという方の中にも、アナログ業務が当たり前になっていることで、こうした社内の反対の声で悩まれている方が多いのではないでしょうか。
塩崎様はこの課題をどのように乗り越えたのでしょうか。
塩崎氏「反対意見や拒否反応を起こしている人は、具体的に考えて反対意見を出していることはほぼ皆無です。以前に受注産業にいるときにもシステム導入の支援などもしてきましたが、同じようなことがたくさんありました。それは設計段階、開発段階、どんな段階で話をしても必ず拒否反応は出てきます。
こうした感情論で発言をしてしまっている人に対していくら説得をしても時間の無駄になってしまうので、私の場合説得はしませんでした。その代わり、デジタル化によってどれくらい会社全体の業務改善が図れるかはイメージできていたので、自信をもって無理やり推進していくという感じでしたね。
そして当時反対の声を上げていた現場の方々も、今では在宅勤務もできて業務効率も上がったことで、幸せそうな顔をして仕事をしています。ECを導入してからは、取引件数や受注のボリュームが増えても業務量が変わらないので、残業はずっとゼロです」
実際に業務効率化の実感がわくのは、運用に慣れてからだと言います。特に今までのアナログな業務だと夜遅くまで仕事をしていたのが、繁忙期でも定時に帰れているというのが実感に繋がっているそうです。
社外の課題(問屋さんとの関係性)
これまで小売店に対しては問屋を通して取引していたのが、ECではメーカーと小売店が直接取引することになります。それによって問屋との関係性が悪化するのでは、といった懸念を抱かれる方もいるのではないでしょうか。
しかし、シュアラスターではこうした部分においては特に課題がなかったそうです。
塩崎氏「その点に関してはそこまで苦労したということはありません。問屋にもECを通して商品を卸すようになったケースもあり、その場合はプラスの意見の方が多いです。
他の業界でもそうだと思いますが、一般的な取引条件として問屋から発注があった商品はその問屋の倉庫に納品するというルールがあります。そこから小売店に対して商品を発送するのですが、ECを使って注文してもらった場合、商品の代金が1万円以上であれば送料で、しかも納品先を小売店に設定することができます。
問屋からすると小売店に直接配送してもらった方が保管料、配送料がかからないですし、業務効率にもなるので喜ばれています」
ツールを選定するときの基準
シュアラスターでは、開発会社にECサイトの構築を相談した際に、BカートとPaidを紹介され導入を決めたそうです。同社にとってはこのツールが合っていると判断されたそうですが、ツールを選ぶ時の基準はどのように考えるべきなのでしょうか。
塩崎氏「DX=システムやツールを導入すればいいということではなくて、ツールはあくまでも企業活動をサポートしてくれるものなので、まずは自社の企業活動の中でITのシステムやツールを導入することで業務改善ができるという判断ができるかどうかがまず大前提です。
その判断ができれば導入すればいいですが、そうでなければ必ずしも対応する必要はないと思います。
そのうえで、社員のリテラシーだったり、自社のワークフローだったり、あとは会社の特性によっても選ぶツールは変わってくるでしょう。前職でも、高機能で費用のかかるシステムを入れて大失敗している企業さんをたくさん見てきました。
また、情報システム部門に任せて開発したら現場の業務に全くマッチしなかったり、逆に現場の担当に任せて開発を進めていくと今度は全く専門的なものにならず効率化できなかったということも起こりえます。今回私が無理やり推進していったのはまさにそこで、マネジメントクラスの人がITの知識も勉強しながら、同時に情報処理をどう効率化するかを考えることが必要です。
情報は基本的に勝手に発生して勝手に処理されることはなく、人が動くことで情報が動きます。そこは必ずセットなので、情報をどう動かせば人の業務が改善されるのかという風に考えないと、情報だけ追ってしまうと結果として効率化につながりません。
とはいえ、そんなに難しいものではなくて、弊社のような一般的な製造メーカーであれば、一般的なシステムでマッチするはずです。もしBカートのようなサービスを検討したときに、ツールのワークフローや仕組みが自社に合わないとなったら、自社のワークフローを変えてツールに合わせた方が早いですし安上がりです。
ちなみに、ほぼほぼの中小企業ならスクラッチ開発はやめた方がいいと思います。高い予算をかけて使えないものができてしまったら、そこで捨てるわけにはいかないので、減価償却が終わるまでお付き合いする不幸な時間が続いてしまいます。
それだったらSaaSのようなある程度低コストで導入して、万が一うまくいかなければ最悪やり直せばいいと考えた方が得策です。弊社のグループウェアに関してもあまり高機能なものは入れませんし、スクラップ&ビルドがしやすいデータベースのソフトウェアを選んでいます」
EC化に成功した「現在」と「これから」
EC化によって得られたメリット① 小口取引の増加
ECサイトを構築して、新規取引の門戸をオープンにできたこともメリットとして大きかったそうです。サイト上でお客様が会員登録をしてPaidの与信が通れば安心して取引を開始できるようになったので、営業が仕掛けなくても自動的にアカウントが増えていくようになっているのだとか。
これまで大手以外の個人事業主で運営されているような小さい店舗さんは口座を開くのにはリスクがあるため、直接の取引はお断りしていたそうです。しかしPaidを通しての取引であれば、シュアラスターにとっては売掛のリスクもありません。
EC化によって得られたメリット② 営業活動の効率化
取引がEC化することによって、アナログな会社とは残念ながらお取引をお断りすることになる場合もある一方で、営業活動が効率化されたこともメリットだったそうです。
塩崎氏「例えば取引先が50社ある場合に、これまでは新商品を発売したら営業マンが50件アポを取って各社に出向いて商品の紹介をしていたのが、取引をECに集約したことで、基本的にはまず新商品が出たことをオンラインで一斉に案内できるようになりました。
もちろん上得意のお客様には直接伺ってフォローもしますが、新商品だけでなく、期の途中で販売する企画品の情報や、仕様が変わったなどの案内も一斉に発信ができるようになったので、そういう業務改善も大きかったです。
さらにECには現在弊社で販売している全商品の70品目ほどを掲載していますが、昔から決まった商品しか仕入れをしないお客様がECですべての商品を見たときに、こんなに品目があることを知らなかったと言われることもあります。そこから別の商品も仕入れたいという風に、取扱品目が増えることもメリットでした」
今後はより泥臭い業務に注力
先述の通り、小口の新規取引には営業リソースをかけずに単純にプラスオンで取引先が増えているそうなのですが、ではEC化による業務効率化で確保できたリソースはどこに使っているのでしょうか。
塩崎氏「弊社としてはアナログな営業活動を効率化することによって、より泥臭いことに時間を使えるようになりました。具体的にはシュアラスターのファンを作るために、消費者に対して直接的に働きかけることです。
実は洗車の仕方を知らない方が結構いるので、車好きが集まるところに営業マンが出向いて洗車の講習会をするといった取り組みがより多くできるようになりました。
そうすることによって売上全体の底上げができていて、数字でいうとここ10年で売上は150%で伸びています。この業界で売上が右肩上がりというのは非常に珍しいです。決してスマートな仕事をしようということではなく、もっと泥臭いことをするために効率化をしようというのが弊社でやっていることです。
冒頭でも説明しましたが、機械が得意なことは機械に任せて、ファンづくりみたいな人にしかできない付加価値の大きな業務に時間を投下することで、売上にもつながってくると思います」
まとめ
いかがでしたか。EC化に取り組みたいもののなかなか社内の理解が得られずに困っている方や、EC化によってどんな効果が得られるのかを知りたい方にとって、参考になりましたら幸いです。