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社内規程SaaS「KiteRa」が実現する、社労士業務のDXとは

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「社内規程」は、「就業規則」や「賃金規程」といった身近なものを含め、社員が働くためのルールを細かく定めたものです。ただ作るだけではなく、しっかりと従業員に周知し、適切に運用しなければ意味がありません。

多くの企業がこうした業務を専門家の社会保険労務士(以下、社労士)に依頼していますが、専門的な知識が必要なうえに、ドキュメントの作成や管理には膨大な手間がかかります。

株式会社KiteRaは、こうした社労士が抱える社内規程業務の課題を解決する社内規程SaaS「KiteRa」を提供する会社です。今回は同社の代表取締役CEOである植松 隆史氏に、サービスがどのように社労士の業務DXを後押し、ミッションである「安心して働ける世界をつくる」をどのように実現しているのかを伺います。

植松様が起業した背景

ーまず、起業したきっかけを教えてください。

前職で約14年間人事労務の仕事をしており、退職前の3年ほどは会社の内部統制やガバナンスの整備に携わっていました。社内規程としてどのようなルールを定め、どのようなオペレーションを設計するか、ということを文書化して書類に落とし込み、その管理や運用を行うことがメインの業務です。

書類の作成には一般的な文書作成ソフトを使っていたのですが、社内規程は法律条文のように章立てになっているので、これを一般的なソフトで作成しようとすると非常に不便なんです。そこで、社内規程の編集・管理をする専用のエディタを自前で作れたらいいなと思い、当時の会社はソフトウェアを提供している会社だったので、手が空いているエンジニアにお願いして非公式に作ってもらいました。

そこに当時の代表から、社内規程を扱っている企業にもこうした専用のソフトはニーズがあるのではないかと目をつけていただき、予算も付けた新規プロジェクトとして動くことになりました。これがKiteRaというサービスの卵です。

ただ、そこから1年ほど経ったタイミングで会社の経営戦略の変更により内部統制の整備が必要なくなり、プロジェクトも保留にする話が出てきました。私と数名のメンバーは会社の経営方針は理解できたのですが、「作り上げたものを世の中に広めたい」、「他の方々にもぜひ使っていただきたい」という想いも強くあり、会社と交渉する中でプロダクトを買い取る形で独立することになりました。

そして2019年4月に株式会社KiteRaを立ち上げました。

―自身の経験から社内規程の作成・管理を効率化すべくサービスを立ち上げられたとのことですが、具体的にどのような課題を解決したいという想いがあったのでしょうか。

社内規程は1回作成して終わりではなく、法律の改正や会社の事業フェーズ、社会情勢の変化に応じて日々メンテナンスを続ける必要のあるドキュメント類です。また、編集後のバージョン管理や行政への届け出、従業員への周知等も必要になってきます。    

文書作成ソフトだと規程に特化したエディタではないので、作成や編集に工数がかかり、バージョン管理も属人化する可能性があります。また、行政の届け出は紙で行ったり、従業員への周知はPDF化したものを配布したりと、規程に関する業務は様々なツールを行き来することが多く煩雑です。そういった課題を解決するために、規程に関する業務を統合的に管理できるプラットフォームを作ろうと思いました。

まずは企業の社内規程業務に深い関わりのある社労士事務所にサービス提供を開始し、その後2022年夏に一般の事業会社向けのサービスも提供を始めました。

社内規程SaaS「KiteRa」とは

―具体的にサービスにはどのような違いがあるのでしょうか。

社労士の先生方は、顧問先の企業を抱えている場合が多いんですね。そういった顧問先の労務管理や社会保険の手続きの代行を行うのがメインになるため、そうした業務をサポートするツールとして特化したシステムが「KiteRa Pro」です。クラウド機能も備えており、KiteRa Proを介して先生方と顧問先がシステム上で直接やり取りを行えるようになっています。また電子申請にも対応しており、公文書の確認まで行えるのが特徴です。

また顧問先の企業もKiteRa Proの利用が可能なので、弊社のサービスを介して社労士と顧問先が社内規程を共同で管理・運用していくという環境を構築することができます。これを顧問先へサービスを提供する際の付加価値として使っていただけるのもメリットの一つです。

一方、一般の事業会社向けに提供している「KiteRa Biz」は、企業で規程管理を行っている担当者向けのサービスです。社内規程の作成・編集・管理・共有・申請の一連のプロセスを統合管理することで、規程業務の効率化を実現すると同時に、企業のガバナンス向上を実現します。

部署ごとに閲覧できる規程を制限したり、関連企業含めた全ての規程管理も可能なので、特に会社の内部統制を維持していく必要性のある中堅~大企業規模の会社様に好評をいただいております。

―DXが叫ばれていることもあり、業界全体でも効率化のニーズが高まっているのでしょうか。

社労士に限らず士業全体にDX の流れが押し寄せてきていて、それに関しての理解や必要性も高まってきていると感じています。特に行政が電子化を推し進めているところがあるので、行政と密接に関わっている士業では我々のサービスに関わらず、ITツールの導入が進んでいますね。

特にChat GPTのようなLLMモデルは士業サービスの価値そのものを大きく変える可能性を秘めていると考えています。弊社としてもその流れを後押しできる存在になっていきたいです。

「安心して働ける世界をつくる」ための同社の取り組み

―こうしたサービスは、貴社のミッションである「安心して働ける世界をつくる」に基づいて社労士の働き方を変えていこうとしていると思いますが、貴社の従業員に対して安心して働けるために意識していることはありますか?

働き方に関しては、色々試行錯誤を重ねてきています。フル出社の時期もありましたし、フルリモート、ハイブリットの時期もありました。コロナ過を経て、出社の頻度だけではなくて、休みの取り方や労働時間を含め様々に変化させてきています。

会社の事業フェーズや社会環境によって変化してくると思いますが、私は「事業成長に最も貢献しやすい働き方」が理想だと考えています。今はハイブリッドで出社とリモートと半分ぐらいずつにしていますが、7月からは出社を原則とする予定です。

これは来期以降の中期経計画を実現するために社員間のコミュニケーション量と質を高め、最適な意思決定を最速で出し続けることが必要だと判断したからです。

上手くいくかどうかはやってみないと分からないですが、もし上手くいかなかったらそのとき変えれば良いと思っています。働き方は手段の一つでしかないので、目標達成のために必要であれば柔軟に対応していきます。

―最後に、今後の展望を教えてください。

今は会社のガバナンスを整えたり、制度や仕組みを作ったりするためのドキュメントのみを扱っているのですが、会社の内部統制を司る文章は他にもたくさんあります。それらは相互に影響し合っているので、会社の内部統制を担保するドキュメント類を総合的に管理できるプラットフォームに進化していきたいと思っています。

会社名
株式会社KiteRa
住所
〒107-0061 東京都港区北青山1-2-3 青山ビル7階
事業内容
社内規程SaaS「KiteRa」の開発および運営
URL
https://kitera-cloud.jp/
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この記事を書いた人:

高澤夏紀

普段はPaidのWeb集客を担当。ビーチバレーが趣味。より多くの方にご覧いただけるメディアを目指して邁進します。

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