“事業成長”につながるコミュニケーション戦略を。PR広報の役割とは?【前編】
ベンチャー企業やスタートアップにとって、会社の認知や資金調達につながるPR広報活動は非常に大切です。しかし、実際にはどうやったらいいのか、何を発信すればいいのかなど、手探りでやっていることが多いのではないでしょうか。
そこで今回は、多くのベンチャー、スタートアップのPR広報活動を支援しているStory Design house株式会社の代表である隈元 瞳子様に、PR活動において重要なポイントを伺います。
前編となる今回は、隈元様が起業したきっかけやStory Design houseがPR支援をしているうえで意識していること、さらに同じオフィスで展開しているコワーキングスペース『flat5』(フラット ファイブ)についてご紹介します。
目次
事業成長の可能性を広げるためのPR広報とは
前職のPR会社から独立を決意
―隈元様は起業する前もPR会社にいらっしゃったそうですが、独立しようと思ったきっかけは何だったのですか?
「起業する前にいた戦略PRの会社では、かなり幅広い企業様のお仕事に関わらせていただく機会がありました。その中でも特に起業のきっかけになったのが、工業向け製品を作っている中小企業さんとの取り組みです。その企業さんが技術力を生かして自社ブランドを立ち上げるプロジェクトに、ブランドを立ち上げる前からPRとしてどうメディアに出していくかなど、コミュニケーション戦略のお手伝いさせていただきました。
初めの戦略がうまくいき、ブランドファンも増え、売り上げも伸び、とてもいい結果に繋がりました。そのプロジェクトを通して、初めの戦略から一緒に取り組むことで、事業成長の可能性が大きく広がることを実感したんです。そういう仕事をもっとやっていきたいと思って、意を決して独立することにしました。
会社員を辞めて2か月間くらいはフリーランスとしてやっていましたが、その時点ではそのままフリーでやるのか、会社を作るのかははっきり決めていませんでした。ただ、フリーの期間に何件か仕事をする中で思ったことは、1人でやれることと、チームとしてやれることは違う、ということでした。そう思った時に、企業様の事業成長にコミットするうえでも、チームとして取り組み、広い領域で貢献していきたいなと思い、会社にすることにしました。そうしてStory Design houseを立ち上げたのが、2014年1月です。」
戦略立案から実行まで幅広く支援
―Story Design houseとして新たにPR事業に取り組むことになったと思うのですが、具体的に企業様の“事業成長”を実現するためにどのようなソリューションを提供されているのでしょうか?
「PRといっても幅広い領域の仕事をやらせていただいていて、いわゆるPR・広報の実務的な活動をすることもあれば、広報活動を軸により経営に近いコンサルティングをやらせていただくこともあります。さらに、それを具体的に実行していくためのマーケティングやブランディング、そしてそれを表現するクリエイティブといったように、戦略・PR・マーケティング・ブランディング・クリエイティブという5つの支援領域があります。
例えば、社長1人で事業を展開していた創業期からご一緒している会社さんでは、「これから広報PRをやっていきたいと思っているけど、何から始めたらいいか分からない」という段階から、どういうふうに情報発信をしていくべきか戦略を立てていきました。
企業情報を取り扱っている会社さんなので、事業の一番の価値は「情報」です。その価値をちゃんと伝えられる取り組みとして、オウンドメディアを立ち上げ、定期的に調査レポートを発信することにしました。リソースも限られていたので、広報もインバウンド的にできる仕組みを考え、発信した情報がちゃんとメディアの人に届いて広がっていくようにしたんです。調査レポートを軸に発信する機会を増やし、そこから広報の問い合わせにつなげていきました。
今はクライアントさんに広報専任の方がいて、活動も次の展開に進んでいます。雑誌の特集企画を一緒にコラボさせていただいたり、データを使った記事をメディアへ寄稿するなど、取り組みが広がっています。このように、何をやるべきか、何からやるべきか、という戦略を一緒に作り、実行していくご支援をさせていただいています。」
事業成長につながるためのコミュニケーション戦略を
―本当に経営に近い部分から携わっていらっしゃるんですね。その中で特に意識していることはありますか?
「一番大事にしているのは、企業様やサービスの事業成長につながる活動になっているか、ということですね。PR広報では、場合によってはまず打ち上げ花火を目指すケースもあります。もちろんそれを目指していくのも一つの戦略ですが、でもそれだと、結局何のためにやっていたのか分からなくなる会社さんは意外に多いです。いろいろ実行して何かしら手応えはあっても、本当に目指すものにつながっているのかは分からない。
せっかくやるのであれば、ちゃんと初めから事業成長につながる取り組みをした方がいいですし、常にその目的をめがけてやっていけることがベストだと思っています。ですので、「事業成長につながるためのコミュニケーション戦略」というのが弊社PRにおけるコンセプトです。」
その場にいることをメリットと感じられる空間を作りたい
同じ考え方を持つ人たちが集う場を提供
―PR事業の他にもコワーキングオフィスの運営もされていますよね。こちらはどんな目的で作られたのでしょうか。
「弊社と株式会社URBANWORKSという会社と共同で、「flat5」というコワーキングオフィスを運営しています。URBANWORKSさんは街づくりの会社さんで、もともとベンチャー界隈の仕事を通して出会いました。全く異業種ではありますが、共通項として、事業における “デザイン”というのがつながっています。弊社はコミュニケーションのデザイン、URBANWORKSはまちづくりのデザインで、対象は違いますが“事業成長”という目線でデザインするという部分で方向性は似ているんです。そういう風に同じような考え方や方向性を持っている人たちが集って仕事ができるとおもしろいのではないか、というアイディアからコワーキングスペースを作ってみようということになりました。
今は、まちづくりの会社さんやグラフィックデザイナー、テキスタイルのデザイナーなど、何かしらデザインを事業体としている人たちが集っています。イベントも定期的に開催していて、例えば日本橋界隈の企業を集めたランチ会など、普通に仕事をしていると出会わないような人とつながれるような機会を作っています。
実際それに参加した人と弊社のクライアント様のお取り組みを一緒にやらせていただいたり、参加した人同士でコラボレーションのきっかけが生まれたりしています。」
「flat5」らしい空間とは
―キッチンがあるのも印象的ですが、とてもリラックスできる空間ですよね。
「ここを作るときの一番のコンセプトとして、真ん中にキッチンを置くことを決めていました。キッチンがあることで食を通じて人とコミュニケーションをとれますし、普通のオフィスにはない空間があることで仕事にも余白が生まれて、よりよい仕事に取り組める環境が創れるのではないかと思っています。
あとは、「ここflat5だよね」って言われるような空間ってなんだろうって話しながらできたのが今の形なんですけど、仕事をするうえで落ち着くことができて、かつ人と交流がとれる環境にしようというのが、結果今のデザインに凝縮されています。緑が多いのもflat5らしさの一つの特徴です。」
普段出会わない人たちと出会えるのがメリット
―隈元様が考えるコワーキングスペースの役割ってなんでしょうか?
「世の中にはいろいろなコワーキングスペースがあると思いますが、せっかくそういう場に入るのであれば、そこの場にいることをメリットと感じられるような空間でありたいと思っています。“そこの場にいることのメリット”って何かというと、普段出会わない人たちと出会うことであったり、界隈のご近所さん的なつながりから、お互いに仕事がうまくできることであったり。例えば、flat5にいるグラフィックデザイナーさんであれば、実際は会社は異なりますが、弊社のメンバーにとっては仲間のような存在で、ちょっとデザインに悩んだら相談できるし、仕事をお願いすることもあります。そういうつながりって弊社がflat5にいなかったらできなかったことなんですよね。ここを使ってもらうことで、お互いにいい出会いになるような空間を作っていきたいです。
名前の由来も、“5”はここが5階だからですが(笑)、「flat」は英語でアパートメントみたいな、いくつかの部屋があるフロアというニュアンスの意味なんです。日本でいうと長屋みたいなイメージですね。区画が明確で横の交流がないのではなく、ご近所さんが生まれるような環境というところでコンセプトに合うと思って、「flat5」にしました。」
前編はここまで。
後編では、実際にスタートアップやベンチャーがPR活動をするうえで気を付けるべきポイントや、今後の事業の展開についてご紹介します。