【注目のAIスタートアップをご紹介④】高精度AI自動構築エンジン「V.I.K.I」
前回に続き、AIアクセラレータプログラム第3期採択企業より、注目のAIスタートアップをご紹介します。
今回は、EAGLYS株式会社が提供するソリューション、データを暗号化したまま解析できる技術「秘密計算エンジン」を搭載した「V.I.K.I」をご紹介します。
今までのデータのセキュリティの概念を覆す最新のAI×Security技術です。
目次
高精度AI自動構築エンジン:V.I.K.I.
データを守りながら活用できる「V.I.K.I.」とは
V.I.K.I.は、今までのジレンマを根本から覆し、データを守りながら活用することができる世界初のSecure AIソリューションです。通常、AIがディープラーニングをするときには生のデータを解析しています。それだと、入力データも、AIの中のパラメータも、出力データも隠すことができません。だったら単純にデータを暗号化すればいい気がしますが、そうすると今度は技術的にAIが計算できなくなってしまいます。
EAGLYSは、これまで不可能だった“データを暗号化したまま計算する”ことを可能にする「秘密計算技術」を開発したのです。そして、それを搭載したのがV.I.K.I.なのです。
全プロセスでデータを暗号化できる「秘密計算技術」
秘密計算技術では、暗号化されたデータを暗号化されたままディープラーニングに入れると、計算のプロセスが稼働します。そして、さらに驚くことに出力データも暗号化されてアウトプットされます。なので、ハッカーは入力、計算、出力のどのプロセスを見ても、何が何だか分からない状態になるのです。しかし、もちろんクラウド上では欲しかったデータの計算が行なわれています。
実際の出力データを見たい場合には、適した人が適した鍵を使ってアクセスをすれば、暗号化されたデータが復元できるという仕組みです。
「V.I.K.I.」が大切にしているポリシー
同社の代表である今林広樹氏は、3つのポリシーを掲げています。
1つ目はVeiled。量子コンピュータ時代において、データをベールで包み安全性があること。2つ目がInteractive 。AIなので業界知見を柔軟に学習し高精度であること。そして最後3つ目がKinetic。すぐに使えて、レスポンスが早く、高性能であることです。
この3つのポリシーが含まれたのがV.I.K.I.~Veiled Interactive Kinetic Intelligence~なのです。
AI時代におけるセキュリティ課題
昨今、CoinCheckの仮想通貨流出事件やYahooの30億ユーザー情報漏洩事件など、セキュリティに関する話題が絶えないのが現状です。
今後AIをクラウドで展開していく上で、さまざまな秘密情報が蓄積されていきます。そして、入力データだけにとどまらずAIの中のプロセス、さらにDBとの通信において、ハッキングの可能性があるのです。
AI時代では、データ自体が資産化します。そのような資産は価値になるので、もちろんハッキング対象になるわけです。なので、いかにセキュリティ対策をするかが非常に重要です。
これまで、データを使う場合は金庫から取り出さないといけないので守れませんでした。反対にデータを守ろうとするとデータを使えなくなってしまいます。こうした、ある種のジレンマが当たり前だったのです。
そこに問題意識を持ち、提供を始めたのがV.I.K.I.というソリューションです。
将来を見据えて取り組むAI×セキュリティ
まずは不動産業界をターゲットに
これまでさまざまな大手企業を中心に、不動産の価格査定エンジンやWebメディアのレコメンドエンジン、さらにスポーツの解析などで提供実績がありますが、今は不動産に絞っていろいろなサービスを検討しているそうです。現状、不動産業界はITに関して知見は深くありません。しかし、業務の自動化を行なって時間的コストを削減したいという課題や、特に競争力の根本となるデータを守りたいという課題を抱えています。
そこで、AI、つまりクラウドを活用しないといけないという認識はありながらも、クラウドのセキュリティにも課題があります。現状の対策としては、AI用のサーバを購入し、環境構築から導入までを外注する。そしてセキュリティソリューションを購入して入れているのです。このような時間も費用もかかるセキュリティ対策に対して、同社は不動産に特化した「V.I.K.I.REALTY」というソリューションを提案しています。
各企業が持つさまざまなデータを集めて暗号化します。そして、この不動産がいくらで売れるのかを算出したり、類似事例を抽出したりするAIが暗号化状態で学習します。最終的に、最適な販売価格を提案したり利回りを計算したり、類似物件を紹介したりといったアウトプットももちろん暗号化状態です。
実際に大手企業に提供したり、業務提携をしたりというのを進めているそうです。
今、AI×セキュリティに取り組む理由とは
今林氏は、なぜ今AIにおけるセキュリティに取り組むのかについて、シーズとニーズの点から考えていると説明しています。
まずシーズ、つまり技術課題の部分では、3つの課題意識からこの秘密計算の技術が使われているといいます。1つ目は計算コスト、2つ目はストレージコスト、そして3つ目は通信コストです。暗号化するとデータが非常に大きくなります。さらにそれに対して解析をするので、なりの計算時間がかかるというのが研究世界での課題でした。それに対して量子コンピュータなどが出てきて2020年の実用化に向けてどんどん伸びていることもあり、今取り組むべきだと考えたそうです。
そして、ニーズに関しては各業界のAIに対する関心の高まりがあります。今までAIといっても概念的だったものが、実際に業務内でアプリケーション化するという前提でのニーズが顕在化してきているといいます。
このシーズとニーズの2つがマッチしたタイミングがまさに今だったのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
“情報が資産化している時代”において、セキュリティは非常に大きな課題です。AIという最先端技術で、いち早くそのセキュリティ課題に取り組む同社の今林氏は、日経新聞で「AIモンスター」として取り上げられるなど、注目を集めています。Fintech領域への進出も考えているそうなので、これからも動向が非常に楽しみです。
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