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パラレルキャリアで起業するという新しい選択肢。その目的とは?【mixtapeインタビュー前編】

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「パラレルキャリア」という言葉をご存知でしょうか?wikipediaには、「ピーター・ドラッカーが著書『明日を支配するもの』等にて提唱しているこれからの社会での生き方のひとつ。現在の仕事以外の仕事を持つことや、非営利活動に参加することを指す。」とあり、今注目されている新しい働き方です。

フォーム作成サービス「formrun(https://form.run)」を提供するmixtape合同会社は、創業者3人ともがこのパラレルキャリアで起業した会社です。そこで今回は、共同創業者の堀辺 憲様に、パラレルキャリアで働く可能性についてお伺いしました。

前編では、パラレルキャリアで起業した経緯とその目的、さらにformrunのサービスについてご紹介します。

フルコミットでの起業は自分たちの足枷になる

起業に必要な経験をするためにスタートアップへ

ー堀辺様が起業しようと思ったきっかけから教えてください。

「まず私の経歴からお話しますと、株式会社クボタに8年間セールスとして従事したあと、3M Japanという化学メーカーの会社に8年間在籍して、6年間はセールス、残りの2年間はマーケティングの分野にいました。

そしてDeNAに入ったのですが、新入社員中心に入ってくる方々の多くが「起業します」というお話をされることに衝撃を受けました。今までずっとサラリーマン街道まっしぐらでやってきた私にとって、「起業」という言葉が全く身近ではなかったんです。しかし、数年後には実際に羽ばたいていくメンバーたちの姿を目の当たりにしたことで、少しずつ起業が身近になり、興味を持つようになりました。

そして起業するにあたってどういうスキルセットや経験が必要なのかを考えたときに、スタートアップで幅広い業務領域に能動的にたずさわる機会を得た方が起業の道に近づくのではないかと思って、その後はスマートフォン決済サービスや人材サービスのスタートアップでお世話になりました。

ただ、起業できるといいなとか、いつの日か自分が作りたいサービスを提供できればいいなという漠然な思いしかなく、それをどうやって実現したらいいのだろうと考えながら過ごしていたときに、創業者の1人であるエンジニアの多田から「起業しませんか?」と声をかけられたんです。開発者から声をかけられたのはそのときが初めてでしたが、非常に信頼できる人間でしたし、この人となら自分の思い描いているアイディアや着想をカタチにできるのではないかと思い、起業を決意しました。そして以前の職場でお世話になったデザイナーにも声をかけて、3人で創業しています。」

1日も早くサービスを提供することを優先するためのパラレルキャリア

ー3人ともパラレルキャリアで創業されたのだとか。その目的は何だったのでしょうか。

「そもそも3人の根幹にある考えとして、1つのサービスというより複数のサービスをいろいろとやってみたいということがありました。起業というと“フルコミット型”、つまりキャリアや生活も含めてすべてをかけて、資金調達を経てサービスを大きくグロースさせていくやり方が圧倒的に多いですが、やってみたいサービスが本当に顧客やマーケットに受け入れられるかやってみないと分からない、つまりリスクでもあります。それに複数のサービスを作りたいときに、1つの事業だけにフルコミットしてしまうと、それがかえって次に作りたいもの、ピポットの足枷になりかねません。ファイナンスやさまざまな施策を考えるよりも、先にコードを書いてα版、β版などのライトなもの、MVP(Minimum Viable Product)を1日も早くマーケットに提供することの方が優先順位が高かったんです。

なので、自分たちの生活リズムやサラリーを大きく変化させずに、まずは就業時間外の中でサービスを作ってみようということにしました。当時3人とも副業OKの会社で働いていたこともあり、日中は企業で働いて、夕方仕事が終わってから3人で集まってサービス作りに励むということを繰り返しました。」

ーそもそもパラレルキャリアとはどんな働き方なのでしょうか。「副業」とも違う?
「私は今「ふくぎょう」という言葉は2種類あると思っています。まず、一般的に従業員を拘束する企業視点から「主」と「副」を明確にする必要がある場合の「ふくぎょう」は、いわゆる「副業」です。それに対し、私たちが実践していた「ふくぎょう」は「複業」。つまり、本業と自分たちが能動的に動いている業務にプライオリティの差がないのです。もちろん一方が忙しくなるから、もう一方が疎かになるということもありません。

例えば、就業時間後に音楽を聞いたりゲームをしたり、飲みに行ったりといろいろな時間の使い方がある中で、自分たちはその時間に作りたいサービスを作っていただけなんですよね。会社を作るという大げさなことではなく、あくまでも手段であって、プラモデルを作るように仲間と集まって夢中で取り組んでいる感覚でした。楽しいので時間を忘れて没頭してしまうような。

この「複業」がつまりパラレルキャリアということだと思いますね。」

ーパラレルキャリアで起業するにあたって苦労したことはありますか?

「特に苦労したのはコミュニケーションの部分です。パラレルキャリアという働き方だとどうしても時間が限られます。その限られた時間の中で3人がコミュニケーションを図っていかないとサービスを作れません。毎日Face to Faceで会えるのであればコミュニケーションも円滑になると思いますが、週に1回ないし2回しか会えない中で相互理解を深めていくことは難解でした。

それにスタートアップでは良くあることだと思いますが、会社を立ち上げた瞬間がモチベーションの沸点が高いんですよね。そして、プロダクトを出すまでにそのモチベーションは環境などのさまざまな要因でどんどん削られていきます。その時間が長ければ長いほどです。モチベーションが高まるタイミングがあるとすれば、α版やβ版などをプロダクトアウトした瞬間なのですが、そこで持ち直していざ正式版をリリースすると、今度は日々刻々と変化する数字との戦いです。本当に自分たちのサービスが世の中のためになっているのか、お客様の期待に応えているのか、と考えるようになっていきます。

このプロダクトを作るうえでのチームコミュニケーションや、当初の熱量を上回り続けるためのモチベーションのコントロールがとても難しかったです。ただ、顧客の課題解決という価値観はぶれずに伴っていた仲間だったので空中分解せずにイグジットできたのかなと思います。」

開発者がいなくても簡単にフォームを作成できる

フォームの作成から情報の取扱いまでをワンストップで管理

ー苦労もされた中でまずリリースされたのが「formrun」というサービスですよね。formrunはどんなサービスなのでしょうか。

「formrunは、フォームを誰でも簡単に作成して、そのデータを効率的に運用できるSaaS型のサービスです。従来フォームの作成は、裏側であるデータベースの構築や通知の設計、セキュリティの担保など、時間もコストもかかる作業で、開発者にとって非常に負担になっていました。formrunでは、わずか数行のスクリプトコードを入れるだけで、HTML埋め込み型のフォームを用意することができるため、開発工数やコストを大幅に低減できます。一方、フォームが欲しいのは顧客の情報を獲得したり管理したりするビジネス側なので、テンプレートから選択するだけで誰でも簡単に最短30秒で必要なフォームを作成することができるクリエイター機能を用意しています。

そしてもう1つフォームの課題としてあるのが、フォームに入力されたデータのオペレーションです。通常、フォームに入ってくる情報はメールフォームという形式で受けており、さまざまなお問合わせやお申込みは1つのメールボックスに届きます。グループメールなどを使っていると、誰がいつどのようにお客様とコミュニケーションをとっているのか、また対応の優先順位付けも見えません。

それに対し、formrunではフォームに入力されたお客様のデータをカード化し、顧客との対応状況などをステータス毎にボード管理できます。ボード上で担当者をアサインできて、さらにステータスの状況を自由に変更したりラベルを付けることができるので、誰がいつどのような対応をしているかをチームメンバー全員で把握できるのです。また、メール機能を内蔵しており、GmailやOutlookなどのメーラーを別途立ち上げることなくformrun上で顧客と直接メールのやりとりができるため、シームレスなコミュニケーションを実現します。

フォームの作成から情報の取扱いまで、すべてがワンストップで管理できるのがformrunの大きな特徴です。簡易的なCRMツールとしても使えるので、まだ高度な顧客管理データベースを必要としないベンチャーや中小企業にとっては非常に導入しやすいと思います。」

原体験から生まれた新しいフォームサービス

ーフォームを作ることができるサービスはすでにあると思いますが、フォームに着目したのはどんな理由からでしょうか。

「3人でいろいろとアイディアを出している中で、以前の職場で働いているときにフォームの作成に時間がかかっていたことを思い出したんです。フォームの多くは見た目がシンプルなため、当時フォームの作成は簡単にできると思っていたのですが、実際に依頼するとかなり時間がかかります。でもビジネスサイドからすると、フォームはお申込みフォームやキャンペーンフォーム、採用エントリーフォームなど直近の売上から未来の顧客資産につながる大切な顧客接点なので、1日でも早く欲しいわけです。IT企業でもこのニーズに応えられていないわけですから、社内に開発者がいない企業などでは、よりフォームの作成に時間やコストがかかっているだろうと思いました。

そこで今世の中にあるフォームのサービスを調べてみると、フォーム自体は20数年前からある技術ですが、これだけデバイスやWebアプリケーションが進化しているにもかかわらず、ほとんど進化していないことが分かりました。今時なサービスもあまりない。だったら自分たちが原体験として苦労したフォーム作成を簡単にすることで、開発者やデザイナー、さらにビジネスサイドに至る幅広い方々の開発や事業活動に貢献できるのではないか、ということでフォームに特化したサービスを作ることにしました。」


前編はここまで。
起業が「プラモデルを作るような感覚だった」というのも非常に印象的でした。自分たちがやりたいことに柔軟に取り組むために、パラレルキャリアでの起業を選択したmixtape。ぜひ、新しい起業のカタチとして参考にしてみてはいかがでしょうか。

後編では、サービスの正式リリースからわずか1年半ほどでサービス利用者数が6000を超えているという、そのグロースの秘密や、改めてパラレルキャリアで働く可能性について伺います。

後編はこちら
パラレルキャリアは自分の新しい可能性を自ら広げる働き方【mixtapeインタビュー後編】

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この記事を書いた人:

高澤夏紀

高澤夏紀

普段はPaidのWeb集客を担当。ビーチバレーが趣味。より多くの方にご覧いただけるメディアを目指して邁進します。

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