「副業起業」のはじめ方とリアルー気を付けるべきことやメリット・デメリットは?ー【セミナーレポート】
2018年は「副業元年」と呼ばれ、多くの企業が副業を解禁しました。その副業によって「起業」という選択肢も選べるようになっています。
先日、株式会社スタディストで開催されたセミナー『「副業起業」のはじめ方とリアル』では、実際に副業で起業した3名によるパネルディスカッションが行われました。
今回は、そのセミナーのレポートをお送りします。
副業起業の経験者3名をご紹介
noco株式会社 代表取締役 堀辺憲氏
2016年1月に副業でmixtape合同会社を創業。フォーム作成管理サービス「formrun」をリリースし、バイアウト。現在、noco株式会社 代表取締役として、縦書き小説エディタやBtoB向けプロセス管理ツールの開発に携わる。
株式会社スタディスト マーケティング部 坂野元紀氏
2016年1月株式会社スタディスト入社。その傍らで、個人をエンパワメントして社会に活力をもたらすため、個人事業主として21世紀型の働き方インスピレーションメディア「workstyle-cafe.com」とプログラミングスクール検索サービス「variiis.com」をローンチし運営中。
株式会社huntech 代表取締役CEO 川﨑亘氏
ベンチャー企業で地域ビジネスやエネルギー事業開発、製造業における企画・業務改善等を経験。2017年9月に株式会社huntechを創業。一次産業の強化と地域資源の有効活用を推進するため、野生鳥獣の捕獲・流通プロセスの改革に取り組み、「スマートトラップ」という罠猟用のセンサーを販売。
副業で起業しようと思ったきっかけ
「起業」というと、元々いた会社を辞め、本業として会社を立ち上げるイメージを持っている方がほとんどではないでしょうか。しかし実際には、今の会社に席を置きながら、副業として会社を起こすことができます。パネリストの方々は、なぜ本業としてではなく、副業で起業することを選んだのでしょうか。
堀辺氏 ―リスク分散しながら起業に挑戦できる新しい手法―
「自分たちのアイディアをサービスという形で提供するためには、会社という箱がどうしても必要でした。そのために起業という手段を取らざるを得なかったわけですが、人生を賭けてフルコミットするという従来型の起業スタイルを選択できるほど、当時は自信も覚悟もなかったと思います。そのため、起業に対する考え方を変えて副業起業というスタイルはどうだろうと。
限られた時間とコストという制約は生まれますが、短期間で小さなプロダクトやサービスを生み出して、顧客や市場に提供し続けるスタートアップ・スタジオ的なアプローチができるのではないかとも思いました。ビジネスモデルをITサービスと決めていましたので、場所や時間的な制約も少なく、チーム全員がリモートで開発・運営できる環境が副業起業を可能にした要因だったと思います。」
川﨑氏 ―小規模マーケットへの対応と、製品価格を抑える必要があったので副業を選択―
「一つ目の理由は、そもそも狩猟や鳥獣管理のマーケットがあまりに小さく、最終的にそこまで大きな事業にならないと思ったからです。ジビエの流通額は全国で100から150億円程度。その10%に関わり、その10%つまりは全体の1%の利益が得られたとしても、せいぜい1から1.5億円くらいの事業にしかなりません。そこにすべてのリソースを投下してしまうと逆に事業は成り立ちにくいと判断して、副業という形態をとっています。
もう一つの理由が製品のプライシングです。罠猟用センサーにおける競合製品は非常に高く、市場へ普及させるためにも価格を下げる必要がありました。副業という形態をとることで人件費を削り、低価格を実現しました。」
坂野氏 ―副業にすることでいろいろな観点で事業を考えられる―
「会社を辞めずに本業として1本でやった方がいのではないかという話も出ますが、それは難しいと個人的には思っています。なぜなら、起業家は1つのことをずっと考えつつも、別の視点を組み合わせてイノベーションを起こせる人だと思うからです。それであれば、副業として別の事業をやるということに発想を切り替えて、いろいろな観点で見られる方がいいと考えました。」
副業起業のメリット・デメリット
「副業起業」と聞くとかっこいいイメージがあると思いますが、もちろんメリット・デメリットがあります。3名の皆様から挙げられたメリット・デメリットをまとめてみました。
メリット①:自分のキャリアのポートフォリオの幅が広がる
例えばセールスだけに従事していた人が、いきなり総務をやろうと思ってもそのスキルセットがないので難しいものです。ただ目の前の仕事をこなすだけでは、キャリアを広げたいと思ったときにそのチャンスをつかみ取ることは難しいのが現状です。副業起業をすると、経営はもちろん経理や法務などの視座も増えるので、会社からその機会が与えられるのを待つのではなく、自分からその機会を作ることができるのが大きなメリットです。
メリット②:本業の知識や環境を活かせる
困ったときに、本業にいる近い業種の人に聞くことができます。huntechの川﨑氏の場合、本業が中小のメーカーなので、副業の会社で商品を作る際に、加工の技術や方法を製造現場の技術者に聞いたり、試作品を作るときに工場の機械を借りたり、そういったこともメリットになるそうです。
デメリット①:お客様にとっては本業も副業も関係ない
副業起業といっても、お客様が付いた瞬間にお客様にとっては副業かどうかは関係ありません。そういう形態でやっているので、あらかじめ依頼は時間に余裕をもって伝えてくださいとお願いしているにも関わらず、急に明後日までにやってほしいというような依頼がくることもあるそうです。
デメリット②:タイムマネジメントが極めて難しい
本業があると、夕方20時くらいから副業の仕事が始まるので、夜中の1,2時まで作業をするのは当たり前になります。もちろん、本人としては好きでやっていることなので苦にはならないと思いますが、タイムマネジメントをしっかりしないと体調やメンタルに支障をきたしてしまいます。それによって本業のパフォーマンスが落ちては意味がないので、そこが至難だそうです。
副業起業で気を付けるべきこと
その①:マーケットが大きくてスピード勝負の領域には向かない
副業は相対的に投資できるリソースが少ないので、本業でやるよりもスピードは落ちてしまいます。ですので、マーケットが大きくてスピード勝負でやらなければならない事業には向かないのだとか。競争環境がなかったり、ニッチな分野で自分が好きだからやりたいといった分野でやる方がうまくいく可能性が高いようです。
その②:人集めには発信し続けることが大事
坂野氏は、メンバー集めに関して、たまたまプログラミングスクールで出会った人とご飯を食べに行ったときに、意気投合してメディアやサービスをつくろうと決まったそうです。プログラミングスクールのような何かをやりたい人が集まっている場に行くと、一緒に起業できそうな人と出会える可能性が高いようですね。
ただ、ここで気を付けた方がいいのがお金に関する考えが共通しているかどうか。例えば、「皆で稼ごう」という意識の人と、「自分はこれだけやるからこれだけの対価が欲しい」という思考の人とは合わないので、人選びは慎重に行う必要があるというのが3名に共通した認識でした。
その③:副業と本業は完全に切り離さずに考えるべき
川﨑氏は、今の本業の中小のメーカーに転職するときに、他の候補先としてスピード感があってフェーズも進んでいるベンチャーと迷っていたそうです。軸としてはhuntechといかに重複するか。中小のメーカーはモノづくりというところが重なり、もう一つの会社はベンチャー経営というところ。重複させることで双方でノウハウを活かすことを意識していたそうです。
また堀辺氏も、本業と副業のどちらもWebサービスの事業だったので、身に付いたスキルセットやお客様と築いたリレーションは相互作用として使えたと言います。ビジネスとしてはもちろん分ける必要がありますが、むしろお互いのバックグラウンドを活かすことで、例えば誰かと会ったときに、その人と副業と本業でそれぞれ違う形でどんな貢献ができるかを考えることができ、大きな相互作用が生まれます。
その④:モチベーション管理が難しい
こちらも堀辺氏の体験から。チームで起業する際に大変だったのはモチベーション管理だそうです。どうしても、起業しようというタイミングとサービスをローンチするタイミングがピークで、時間が経つにつれてモチベーションコントロールの設計が難しくなる。Webサービスの場合は、スモールスタートでお客様の反応を見ながらスピーディーに修正していくのが常套手段なのだそうで、MVP(Minimum Viable Product)としてローンチをなるべく早く設定することが重要とのこと。
一方で、チームメンバー各々の職場や家庭環境が変わってきたり、常にすべてのメンバーが同じ時間の掛け方や熱量で取り組めるわけではなく、むしろ常にそれを求め続けててしまうと期待値と実務のギャップが生まれ、フラストレーションにつながるものです。そこで定期的にチームのビジョンやミッション、実現すべき目標やKPI、顧客の声を確認、共有する機会を設けていたそうです。
副業起業で目指すゴールとは
このように副業起業についてご紹介してきましたが、大変なこともありつつ、皆さん大きな目標があるからこそ続けてこられているのだと思います。そこで最後に、皆さんが目指しているゴールについて紹介します。
堀辺氏 ―世界の誰かの今日と未来のお役に立てることの嬉しさを感じていきたい―
「社会に横たわっている課題の解決につながること、困っている人たちや不都合な思いをしている人たちが私たちの提供するサービスを通じてポジティブな時間を過ごせるようになることや行動変容のお役に立てることが何よりもの喜びです。そのため、事業を責任もって提供し、拡大し続ける使命感があります。
これを実現するために、ミッションやビジョンに賛同してくれた沢山の仲間がいるわけですが、この事業やチームに参画して良かったと思えるもの、経験なのか体験なのか、インセンティブなのか色々と形はあると思いますが、必ずお返ししたい。一緒にスタートしてくれた大切な仲間ですから。」
川﨑氏 ―関わっている人が幸せに、地域の課題解決の足掛かりとなる事業にしたい―
「huntechとしての目標は堀辺さんに近く、関わっている人からやってよかったと言っていただける状態を作りたいと思っています。もちろん事業として続けていく基盤は必要ですが、それさえ維持できていればメンバーがやりたい事業を支援する、株の売却益を得るなど、ユーザーの方々だけでなく一緒にやっているメンバーの幸せに貢献できたと言える事業にしたいですね。
個人としてはもう少し視座を広げ、狩猟・鳥獣管理以外の分野でも地域課題を解決したいと思っています。そのときにhuntechで築いた地域とのつながりは営業基盤としてそのまま使えるため、新しい事業を始める時のコストを抑えられます。そのように他の事業を手掛けるうえでの足掛かりとなる事業としたいです。」
坂野氏 ―お客様から感謝されることを続けていきたい―
「実は僕自身あまり働くのが好きではないので、嫌々やるのではなく、好きで続けられることでお金を得られればなおうれしいと思っています。本業の社長が良く言っているのですが、『お金は感謝の対価であり、感謝の一票一票がお金』です。それに非常に共感していて、感謝されるようなことを続けることでお金になっていけばいいですし、それによって少しでも便利になったと感じてもらえるのが、今のゴールです。」
まとめ
いかがでしたか。
今の会社を辞めるほどの決心はできないけれど、自分で何か事業を立ち上げてみたいと思っている人にとって、副業起業は一つの有効な手段だと思います。ぜひ今回ご紹介した経験者の方々のお話を参考にしてみてください。
今回登壇された堀辺さんへのインタビュー記事もぜひご覧ください!
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