パラレルキャリアは自分の新しい可能性を自ら広げる働き方【mixtapeインタビュー後編】
前編では、創業者3人がパラレルキャリアで創業したmixtape合同会社の堀辺 憲様に、パラレルキャリアで起業した経緯などをお伺いしました。
前編はこちら
パラレルキャリアで起業するという新しい選択肢。その目的とは?【mixtapeインタビュー前編】
後編となる今回は、サービスの正式リリースからわずか1年半ほどでユーザ数が6000を超えているという、そのグロースの秘密や、改めてパラレルキャリアで働く可能性について伺います。
目次
誰に使ってもらいたいかを考えた施策でユーザ数を伸ばす
風上と風下の両者の課題を解決することがサービスの浸透につながる
ーかなりの勢いでユーザ数が伸びているそうですが、どのような施策をとられているのでしょうか。
「まず、2軸戦略をとりました。まずはフォームを作るのに実際に手を動かされるエンジニアやデザイナーさんにファンになって欲しいと思っていたので、両者にとって利便性が高く心地よいサービスになるようにプロダクト設計を行いました。なので、最初のバージョンでは開発者向けに特化した機能だけをリリースしようということになり、開発者がわずか数行のスクリプトコードを入れるだけで、すぐにフォームが作れるサービスにしました。すると、その利便性を感じてくださった開発者の方々がTwitterなどのSNSやブログ、イベントなどいろいろなところでサービスをご紹介してくださり、formrunの認知が上がっていきました。
そしてもうひとつの軸は、最終的にフォームを使いたい、導入したいと考えているビジネスサイド向けに、コードなどの専門知識をまったく必要とせず、誰でも簡単に最短30秒ほどでフォームが作れるサービスとしてクリエイター機能を搭載しました。
簡単にフォームが作れるサービスというと、Googleさんが提供するGoogleフォームを使えばいいと思われる方が多いかもしれません。しかしフォーム作成にあたり、そもそもどのような項目を設置したらいいのか、どんな順番にしたらよいのか、離脱率に影響しないフォームの項目とは、などを考えるのはかなり大変な作業で、フォームを作るのに半日以上かかかることも少なくありません。formrunではこの非効率な作業をなくすために、あらかじめさまざまな利用シーンを想定したテンプレートを用意しておいて、そこに項目を追加したり削除したり、テキストを編集するだけでインスタントにフォームを作成できるようにしています。
また、Googleフォームだと全体的なデザインが醸し出すトーン&マナーが変えられませんが、formrunならデザインによる圧倒的に自由な表現が可能です。レスポンシブによるスマートフォンでの最適な対応はもちろん、あらゆるモダンなデザインを用意して、フォームを利用する顧客体験を最大化するUIやUXにはこだわって作りました。
この開発者側とビジネスサイド、2軸の課題解決をすることによって、両者側からサービスのファン・支持者を増やし、短期間でのサービス浸透を図ることができました。
そしてもう一つ、スモールチームでの利用促進を図っているので、利用ユーザ1名ごとの月額課金制度ではなく、有料プランでは複数人が使えるようにしています。1人でも多くの方にファンになってもらうためには、formrunでの体験を他のチームに持ち帰ってもらい、広げてもらうことが重要です。どうしても1アカウント=1人あたりの課金にしてしまうと、最小限のコストで利用しようという意思が働くことで、サービスの利用はその1人の体験にとどまってしまいます。また、フォームの情報は異なるチームを横断して取り扱うことが多いので、複数人に課金されてしまうとその足枷にもなります。なので、複数人で使える有料プランを用意することで、事業所内の他のグループに体験を提供しやすいような設計にしています。」
カスタマーサポートツールとして新しい価値を提供したい
ーサービスについては、今後どのような未来を描いていますか?
「ずっとフォームの話をしていますが、フォームにこだわっているわけではなくて、お客様のお問い合わせ対応をいかにスムーズにして、顧客情報をいかに資産化できるかに着眼しています。セグメントを切った方がマーケティング施策をやりやすいので今はフォームに特化したサービスを提供していますが、我々が最も帰趨すべきところは事業会社とお客様との顧客接点の最大化です。なので、今後はお客様のお問い合わせから顧客資産化やエンゲージメントにつなげるカスタマーサポートツールとしてさらに発展させたいと考えています。
元々ベンチマークしていたのは海外のZendeskというサービスです。しかし、我々のようなスモールチームでサービスローンチ時からカスタマーサポートツール寄りの機能をすべて揃えるのは困難で、また一見CRMサービスと混同される可能性があるのではと考え、まずは原体験や身近な人たちが直面している課題解決のためにフォームを中心としたサービス設計にしました。
ただ国内においては、フォーム以外にも商談、電話、FAX、メールさらにチャットなどたくさんの顧客接点があります。今はそれぞれがバラバラになっているので、こういったコミュニケーションのタッチポイントが1つに統合されることによって、よりお客様との情報の取扱いがスムーズになり、カスタマーサクセスにつながるのではないかと思います。
また、多くの企業では縦割りの部署割を採用しているため、営業部やマーケティング部、カスタマーサポート部などがそれぞれ顧客情報を持っており、情報共有がままならずというのが現状です。顧客情報は経営資産としてもっとさまざまなチームを横断して活かすべきだと思うので、今後カスタマーサポートツールとして機能を充実させることで業務効率化の貢献を果たしたいです。
この顧客とのさまざまな接点と社内の複数部門での顧客対応のオペレーションというところに、新しい価値を提供できればサービスを作った価値があると思いますね。」
自分の可能性を自分で広げる働き方
積極的に新しい経験の場所を探すべき
ー改めてパラレルキャリアについて伺いたいのですが、パラレルキャリアという働き方にはどのような可能性があるとお考えですか?
「1日24時間と限られた中、1つの会社だけに規定の時間だけコミットしてしまう働き方だと、知識や経験、リレーションを得る機会は限られています。その機会だけで自分のスキルやキャリアを広げていけるのでしょうか。パラレルキャリアの大きなメリットの1つは、自身が貢献を果たせる場所や能動的に活躍する他の場所を作ることで、1つの組織で得る以外の知識や経験、リレーションの幅が圧倒的に広がるという点です。
つまり自身の新しいポートフォリオを作り、広げることができると思っています。自分の新しい可能性を自ら広げることができて、かつその能力がその組織だけでなくいろいろな場所で活かすことができるのです。会社側にとってもパラレルキャリアを推奨することによって、パラレルキャリアとして活躍することで得た経験や知識などを持ち帰ってもらって、チームに新しい価値をもたらしてくれれば大きなメリットになります。
これだけ多様性が求められる時代ですから、若い人を中心にやってみたいこと、関わってみたいことが複数あって当たり前です。1つの組織やチームにずっと所属し続けることも素晴らしいことですが、いろいろなことをやってみたい人にとっては窮屈で、その人のパフォーマンスを引き出せていない可能性や育成につながっていないケースもあります。そういう人たちが自ら経験を積む機会が得られるのであれば、どんどん積極的にその機会を求めるべきだと思います。その人のパフォーマンスの向上が、新しい価値を生み出すことにつながり、より活発で豊かな社会に貢献することにつながっていく。この流れが加速することを期待しています。」
パラレルキャリアは手段であって目的ではない
ー最後に、これからパラレルキャリアを考えている方々にアドバイスをお願いします。
「非常にチャレンジングではありますが、先述したとおり新しいポートフォリオを作るにはとても意義のある活動だと思います。ぜひその機会があれば能動的に取り組んでほしいですね。
ただ、パラレルキャリアが素晴らしいということではなく、あくまでもキャリアや生き方の選択肢の1つです。パラレルキャリア自体を目的化しないように気を付けてください。美化される話だけでなく、起業であれば余暇の時間も使ったり、他企業で勤める場合なら体調管理を含めた労務管理などのセルフマネージメントが求められ、覚悟も必要です。自己責任も課せられるので、それも理解したうえでチャレンジしてもらえるといいと思います。
さらにその1つの選択肢としての起業ですが、起業すること自体はたぶん皆さんが思っているよりもそんなに難しいことではありません。大変なのは起業したその先にある、事業を作って永続的に事業そのものを顧客に提供し続けることです。また起業してこそ得られる経験や世界があり、自分たちが描いたものを作り、直接お客様に届けることができる醍醐味やチャレンジは何事にも代え難いと思います。」
堀辺様、貴重なお話をありがとうございました。
パラレルキャリアは大変なこともありますが、得られるものはとても大きく新たな働き方として非常に魅力的です。自分の可能性に挑戦したいという方は、ぜひパラレルキャリアで新しい機会を探してみてください。
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