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20代による若手スタートアップ「アイカサ」に秘められた熱い思いに迫る!【前編】

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皆さん、日本は世界で降水確率が世界第2位であり、さらにビニール傘の廃棄量が年間8000万本に上ることをご存知でしょうか?筆者はこの1年間だけでも既に突然の雨でビニール傘を泣く泣く3本も買っています。そのうちの2本は捨ててしまっており、これを知ったときは心が痛みました。

この筆者のように家に傘があるのに、突然の雨のために500円ほどのビニール傘を買わなくてはいけない…そんなジレンマを経験された方はたくさんいるでしょう。
アイカサ」はそんなジレンマを解消すべく生まれた、「傘」をシェアリングするという革新的なサービスです。

今回は、「アイカサ」の代表取締役である丸川 照司氏と共同経営者の黒須 健氏(以下敬称略)に、日頃当たり前になっている不便を見逃さず、その改善に向けて動いていく熱い思いと、起業をするうえで経験してきた苦労について伺いました。

前編では、起業された経緯や、サービスの魅力についてご紹介します。

当たり前になっている不便を改善するビジネスがしたい。その背景にあるものは?

ミニマリスト的思考から生まれたシェアリングビジネス「アイカサ」

―まず、起業された経緯を教えてください。

丸川氏

丸川「私はもともと醤油や自転車の空気入れ、ミシンなどを祖母の家から頻繁に借りるなど、ミニマリスト的な思考が強かったんです。その後マレーシアに住んでいたのですが、ちょうど日本でタイムズさんのカーシェアが出てきて、まさに既存の事業を壊すことにはなるけれど次の新しいサービスのあり方を作っていると感動しました。

実はマレーシアではシェアリングエコノミーがとてもメジャーです。自転車からフードデリバリーも当たり前で、Uberも毎日のように乗っていました。日本で最近少しずつシェアリングサービスが出てきましたが、まだまだ普及していません。

そこで日本で何かシェアリングサービスができないかと考えたときに、日本ならではの悩みとして“雨”があるなと。そして雨が降ると傘が必要ですが、突然の雨で手元に傘がないとコンビニの傘を買わないといけない、でも家に帰ったら5,6本もある…こういう状況がすごく理不尽だと感じたんです。

そこで、たまたまクラウドファンディングのサービスで黒須が「傘をシェアするサービスを始めたい」と投稿しているのを見つけて、一緒に始めることにしました。」

黒須「僕は毎日が同じルーティンではなく、新しくて、おもしろいことがやりたいなと思ったときに、当たり前になっている不便を改善できるようなビジネスをやろうと。その思いから傘のシェアリング、傘を持ち歩かないサービスをやってみようということで、クラウドファンディングをやっているときに丸川から連絡がきました。」

新しい文化やサービスを定着させる難しさ

―2人のビジョンが一致して起業に踏み切られたのですね。実際に起業されて苦労した点はありましたか?
黒須「まず傘を置かせてもらう場所を確保することに苦労しました。街中でシェアする傘を置く場所として一番あったらいいなと思う場所は、やはり駅や店舗、オフィスですよね。そこで最初から駅に話をしにいったのですが、もちろん門前払いでした。渋谷区もいろいろなシェアリングエコノミーをやっているので相談にいきましたが、民間でやってくれと相手にされませんでした。なので、今はとにかくお店を1店舗、1店舗を回って傘を置かせてもらえる場所を見つけています。

そのときに「傘のシェア」と突然言っても伝わらないので、傘がどこでも借りられてどこでも返せることで『傘のいらない渋谷を作りたい』という想いを伝えるなど、説明の仕方は模索しています。

黒須氏

傘を置く場所はなるべく傘と縁がないところで探しています。それこそ、コンビニや商店街だとなかなか置いてもらえません。僕が最初始めたときは秋葉原に行ったのですが、そのときは「そんなサービスはできるはずがない」「今も傘を売っている店があるんだから絶対無理だ」とかけあってもらえませんでした。

今、渋谷周辺でアイカサを置かせていただいているお店には、『傘をシェアしたい』『ベンチャーで頑張っている』という強い想いによる関係性で成り立っています。なので、傘のシェアができる文化が定着するまでは、私たちの想いに共感してくださるところに置かせていただくカタチになると思います。」

苦労と熱い想いで始まった「アイカサ」というサービス

アイカサの利用と仕組みについて

―傘のシェアリングサービスである『アイカサ』は具体的にどのような仕組みですか?

黒須「アイカサのレンタルスポットの傘立てであれば、どこでも傘を借りることができて、どこでも返すことができるサービスです。会員登録をする際に、クレジットカードの登録さえしていただければ利用できます。借りるときには傘についているアイカサの専用QRコードを読み込み、返すときはレンタルスポットについているQRコードを読み込むだけで、その場で返却処理が完了する仕組みです。今はWeb上でしか利用できませんが、今後はアプリになっていく予定です。」

丸川「料金は、借りている時間の10分ごとに1円が課金されます。もし傘をなくしてしまっても、料金の上限600円までしかかかりません。壊れてしまった場合は、弊社が保証します。10分で1円と安く設定しているのは、傘をほとんど無料で貸し借りするイメージで利用してもらいたいと思っているからです。また、BtoCのサービスとしての収益ではなく、アプリを消費者にとってのインフラにすることで広告収益を得たり、消費者がアプリを利用することで得られるビックデータを活用したり、BtoBでの収益を増やすビジネスモデルを考えています。」

アイカサによる集客効果の可能性

―なるほど。それはユーザーにとって便利ですね。では、反対にアイカサを置くお店のメリットを是非教えてください。

丸川「メリットは、お店の認知度向上と集客効果の2つが見込めると考えています。例えば荷物をお店に預けることができるecbo cloak (エクボクローク)さんでは約3割のお客様が荷物を預けたお店の商品を購入したというデータがあります。アイカサもそれに通ずるところがあって、今まで行ったことがないお店でも傘を借りる目的ができることで来店のきっかけが生まれ、そこでお店の認知度を広げることができると考えています。」

黒須「集客効果については、今後クーポンなどを活用することでよりその効果を高めていきたいですね。例えば、今美容院にもアイカサを置けるようにする予定なのですが、突然の雨で髪の毛が濡れてしまったときに、アイカサを使ってもらうだけでなく、お店が15分のブローを割安で受けられるようなクーポンを発行することで、美容院の集客につなげることができるようになります。」

丸川「アイカサのアプリでは、レンタルスポットになっているお店の情報がわかるようになっています。レンタルスポットのアイコンを押すと、お店の写真や紹介文、・営業時間に加え、SNSへの評価リンクなどが見ることができます。」

それぞれの想いがリンクしてできたサービスと起業

丸川様の「シェアリングエコノミーで日本の雨と傘の悩みを解決したい」という想いと、黒須様の「日常の当たり前になっている不便さを改善したい」という想いがリンクしたことで生まれた傘のシェアリングエコノミー『アイカサ』。
そのアイカサも、彼らの熱い想いに共感し、応援したいというお店の方々の想いがあったからこそ、サービスの本格始動に繋がっていることがわかりました。

それぞれの想いがリンクしていくことで、アイカサは確実に『傘を持ち歩かない新しいインフラの実現』に一歩一歩近づいていくことができているのではないでしょうか。

後編ではアイカサの展望、これから起業する方に向けてのアドバイスを伺いたいと思います。

後編はこちら
20代による若手スタートアップ「アイカサ」に秘められた熱い思いに迫る!【後編】

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この記事を書いた人:

山ノ内 綾乃

BtoB事業のサービス営業に魅力を感じています。本屋で書棚を眺めながら癒されています。

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