激化する米中貿易戦争、日本への影響は?政府の方針は?【分かりやすく解説】
悪化する米中間の貿易摩擦問題。この二国に次いでGDP3位の日本にも、影響が及ぼうとしています。日本は過去にアメリカとの間で重大な貿易摩擦問題を経験しているので、今回の米中貿易戦争も他人事とは言い切れないでしょう。
グローバル化が進み外交関係も複雑化した現代、大国同士の対立は世界全体に影響を及ぼします。アメリカと中国という2つの経済大国の関係が緊迫している今、日本にはどのような影響があるのか解説していきます。
米中貿易戦争についての解説はこちら:【3分でわかる】一触即発!?中国とアメリカの貿易戦争とは?
日本を取り巻く貿易戦争の概要
日本とアメリカの関係
アメリカは、中国だけでなく日本との間にも貿易赤字を抱えています。そのため、トランプ大統領は日本に対して赤字の削減を再三要求し、関税協議を迫っています。
日本は今までその要求に応じませんでしたが、これ以上は同盟関係に悪影響を及ぼすと判断した政府は関税協議を視野に入れ始めました。
9月24日に両国の代表者同士で貿易協議が行われたほか、関税協議の是非を話し合うため同月26日には安倍晋三首相とトランプ大統領の会談も行われました。
日本への影響は?
米中の貿易摩擦は、当然二国間だけでの問題ではありません。
例えばアメリカ向けの中国製品の一部には、日本企業の製品が使われています。財務省の貿易統計 によると、半導体などの電子部品やプラスチックなどが中国に多く輸出されているようです。
アメリカが対中国関税引き上げを行えば、日本から中国への輸出も減ると予想されます。
さらにトランプ大統領は「アメリカファースト」を実現するため、日本やヨーロッパからの自動車とその部品への関税を引き上げようとしています。
仮にこれが実現すれば、世界経済に深刻な影響を与えることが予想されるので、日本とEUを含む各国は強く反対しています。
また、アメリカは日本に対してFTA(自由貿易協定)の協議入りを強く求めています。これは、FTA交渉を通じて牛肉やジャガイモなど農産物の対日輸出拡大を図るためだともいわれています。
もしも日本がこれらの農作物にかかる関税を引き下げることとなれば、日本国内の農業は大きな打撃を受けることになるので、政府はTPP(環太平洋連携協定)の関税水準を超えて引き下げる予定はないと発表しています。しかし、アメリカがその条件をのむとは限らないので、どこまで日本の主張を押し通すことができるのか、今後の交渉に要注目です。
日本政府の方針は?
懸念点はどこか
日本政府は貿易戦争の防止が最優先事項だと考えています。
アメリカ、中国、日本は世界の国内総生産(GDP)上位3か国。米中の関係が悪化している今、日本まで同様の争いに関わることとなれば、世界経済に大きな混乱を呼ぶことになるからです。
とはいえ、日本国内の産業もしっかりと守らなければならないので、当然アメリカからの要求を全てのむことはできません。
政府は特に、自動車への追加関税回避を試みています。日本からアメリカへの輸出品目のうち、自動車は4割ほどを占めています。アメリカは自動車へ25%の追加関税をかけることを要求していますが、もしそれが実現すれば日系の自動車メーカーの利益は半分失われてしまいます。
日本の主要産業である自動車産業を保護するためにも、政府は自動車への追加関税を回避しようとしているのです。
対する日本の選択は?
自動車に関しては、アメリカに対して輸出量を規制するという案があります。輸出数量規制は過去に成功事例があるので有力な案だと思われていますが、一度導入すると見直しが難しいので日本経済にも打撃をもたらす諸刃の剣となってしまいます。
日本政府はアメリカ産の原油やLNG(液化天然ガス)の輸入量を増やして対米貿易を均衡化することや、アメリカへ1,000億円のインフラ投資をすることで自動車への追加関税を回避すべく話を進めていますが、うまくいくかは分かりません。
そのほかに有力視されている案は、過去にEUがアメリカに対してとった手法を参考にするというものです。EUは今年7月にアメリカと関税引き下げ交渉の開始で合意した際、自動車関税追加の先送りを引き合いに出し、アメリカに対してうまく要求を通すことに成功しました。
これは、協議を始めることで通商交渉を有利に運んだ例だといえます。日本政府も、アメリカとの関税協議が半ば避けられない状況となった今、EUのように交渉を有利に運ぶ策を講じなければならないと考えているのです。
まとめ
激化する米中間の貿易戦争は、世界中の国々に大きな影響をもたらします。当然、日本も例外ではありません。
貿易構造の変化からくる経済の変動は私たちの生活にも影響します。今後の日本政府や世界の動向からは目が離せません。
米中貿易戦争について、もっと詳しく知りたい方はこちら
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