最新ReTech!不動産をもっと流動的にする米スタートアップ「Cadre」とは
最近、○○Techという言葉を当たり前のように聞くようになり、従来テクノロジーとは無縁だった分野、例えば金融、教育、不動産の中で、テクノロジーを使った新しいサービスがどんどんと出てきています。特にアメリカで近年台頭しているのが、不動産分野のReTech(「Real Estate」 × 「Technology」)です。
今回は、アメリカで今まさに成長真っ盛りの中である、「Cadre」というサービスをご紹介します。
目次
不動産業界の課題を解決するReTechサービス
学生時代からビジネスの才能を発揮していたCEOライアン
Cadre(カードレ)というスタートアップを聞いたことがあるでしょうか?アメリカはニューヨークに拠点を置いている、不動産、ファイナンス、そしてテクノロジーを掛け合わせたような会社です。2014年にハーバード卒業生のライアン・ウィリアムズ(Ryan Williams)と、ジャレッド&ジョシュア・クシュナー兄弟により創業されました。CEOで創業者であるライアンはハーバード大学を卒業後、ゴールドマン・サックスに入社、その後は巨大金融機関であるブラックストーン・グループで不動産投資部門に携わっていました。
12歳の頃から自分でビジネスを立ち上げたり、学生時代には不動産投資ファンドを立ち上げ、1000戸以上の物件を売買していたりと、文句なしの経歴を誇っています。
そんなCEOの経歴と、事業モデルを評価された結果、今までの資金調達のラウンド合計は1.33億ドルを超え、今新しい形のFinTechサービスとしてアメリカで注目されています。
不動産業界をもっと流動的に
では、そもそもCadreとはどんなサービスなのでしょうか。一言で言うと、「不動産投資物件のe-コマース」プラットフォームです。
特定の会社の株式を買うのと同じように、特定の不動産、例えばマンションやショッピングモールなどの建物の保有権の一部を買って所有できるプラットフォームで、厳選された物件のリストを、審査を通過した投資家向けに紹介しているサービスです。
「もし、僕がストリートの向こうにあるあの物件に投資したいんだけど、どうすればいいと思う?と聞いたら、君はおそらく分からないと言うだろう。」とCEOのライアンがインタビュー中で述べているように、今までは特定の物件に投資する方法がありませんでした。REIT(公衆から調達した資金を不動産に投資する金融商品の一種)では、投資家は投資物件までは選べません。すべて投資法人のファンドマネージャーが決めている上に、投資決断プロセスが不透明で、「情報の非対称性」が投資家の不満の種になっていました。そこに風穴をあける形でローンチされたのがCadreです。
そしてもう一つ、不動産に投資するというとまず第一に言われるのが、リクイディティ(流動性)の低さです。投資物件を買ってから売るにせよ、キャッシュに変えるまでに時間がかかるため、国債や株式に比べると流動性は低くなります。これを、Cadreでは不動産の所有権を株式に似た形にして投資家を募ることで解決しています。
シンプルなプラットフォームで簡単に投資可能
Cadreのプラットフォームは、一見するとAmazonの買い物ページとなんら変わりません。価格帯が5000万ドルから2億5千万ドルと少しだけ高いですが。物件情報をクリックすると、トランザクション概要、購入価格、どれだけのエクイティ(資産)が入手可能か、よくある質問項目などの、投資家向け情報が載っています。
お気に入りの物件が見つかったら、50万ドルから何千万ドルまでのレンジで投資したい金額を入力します。これだけで投資は完了です。投資プロセスが迅速に進むことも特徴の一つです。
売り手、つまり不動産取引業者にとっても、取引を比較的速く済ませられるというのはメリットです。ただし、物件の審査はとても厳しく、物件審査の通過倍率は1%程度です。
投資家の精査も厳しいようで、現在プラットフォームにアクセスがあるメンバーは100人前後とのこと。
CEOのライアンによると、100人いるメンバー投資家のうちのほとんどは、既にCadre上で2~3件ほどの物件に投資したそうです。プラットフォーム上でやり取りされた取引は何億ドルにも上るようです。
日本でのReTechの盛り上がりはこれから
日本でも昨今ReTechサービスは増えてきていますが、こういった特定の物件に投資できるプラットフォームは、まだ現れていません。不動産投資と金融、そして日本の不動産業界に特有の商習慣に精通した人物でないと、こういったプラットフォームを作るのは難しいのかもしれません。Cadreが日本に上陸するのが早いか、それとも日本独自のプラットフォームが生まれるのか、これから見ものです。
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