【イベントレポート前編】ベンチャーが”死の谷/デスバレー”を乗り越えるための財務戦略とは
こんにちは!Vacksの山崎です。
2/5(水)、Paid主催のイベント
「ベンチャーが”死の谷/デスバレー”を乗り越えるための財務戦略とは」が開催されました。
資金調達の専門家や先輩ベンチャーの方々をお招きし、
成長するベンチャーにとって重要なファイナンスを学ぶイベントです。
今回はキャンセル待ちが発生するほど盛況だった、
本イベント前編(資金調達サポートの専門家による講義)の模様をお届けします!
目次
資金調達サポートの専門家による講義
概要
「死の谷とはどういった状況なのか?」
「資金不足に陥らないための計画的な資金繰りは?」
といった内容を、資金調達の専門家が解説。
登壇者
資金調達サポートの専門家:
株式会社INQ 代表取締役 若林哲平様(以下、若林氏)
融資サポートに特化した行政書士法人の代表として、
スタートアップのシード期の融資による資金調達を支援。
年間130件超、10億以上の融資を支援するチームの統括責任者。
そもそも、「死の谷/デスバレー」とは?
「死の谷/デスバレー」とは、” 資金調達や売上増大により
資金量が回復するまでの資金量の谷底 ” のことを言う。
死の谷は単なる資金不足ではなく、
スタートアップ型のモデル(※)を指向するベンチャー企業が
新たな市場を開拓していくときに、目先の利益よりも事業開発や
シェア拡大を優先して資金を投入するがゆえに起こる、資金不足のピークを指します。(若林氏)
それでは、「死の谷」から生き残るためにはどうすればよいのか。
まずは、自社の余命を知る必要があります。(若林氏)
※市場が存在することが不確実な環境下で既存市場を再定義するような新しいビジネスモデルを生み、ごく短期間のうちに、急激な成長とイグジットを狙うビジネスモデルのこと。
スタートアップの余命を延ばす方法
スタートアップの余命は、どのようにして算出されるのだろうか。
また、余命を延ばすにはどうすればよいのだろうか。
キャッシュ(現預金残高) ÷ バーンレート(月々の支出額)
で算出できます。そしてこの余命を延ばすには、
キャッシュを増やす or バーンレートを減らす 必要があります。(若林氏)
キャッシュを増やすには
- 資金調達をする
- 売上を上げる
- 入りを早くする
バーンレートを減らすには
- 支出総額を減らす
- 出金を遅くする
次の資金調達までに必要な資金
資金調達ラウンドの間隔は 6~8ヵ月 、
資金調達ラウンドに要する時間は 3~6ヵ月 だ。
資金調達ラウンドの感覚と所要時間から計算して、
バーンレート×18ヵ月+α を目安に調達するのがよいでしょう。
また、次の資金調達の準備はクローズしたい時期から逆算して
9ヶ月前 から始めるとよいです。(若林氏)
公的融資の活用
スタートアップであれば出資がメインになるが、融資を活用する企業も増えている。
日本は金利も低く、公的な創業融資制度が他国に比べて
圧倒的に優れているので、ベンチャーであっても融資を積極的に活用すべきです。(若林氏)
シード〜プレシリーズAで使える主な融資制度・商品
・日本政策金融公庫 新創業融資 ※まずは公庫からチャレンジ!
・保証協会付き融資
・女性・若者・シニア創業サポート事業(東京都のみ)
・きらぼし銀行 創業サポートローン
・商工会議所 マル経融資
シリーズA以降で使える主な融資制度・商品
・民間金融機関のプロパー融資
・日本政策金融公庫 資本性ローン
・商工中金
・日本政策金融公庫 中小企業事業
いざというときのための資金調達方法
融資を受けるためには、半年や四半期に1回など、金融機関との継続的で良質なコミュニケーションをとることが大切だ。しかし、不測の事態が起きたときにはどのような手段があるのだろうか。
以下のようなファイナンスの方法についても予備的に知っておくべきでしょう。(若林氏)
トランザクションレンディング
取引履歴(トランザクション)などのデータを融資審査や条件決定に活用する融資のこと。
freeeの「資金繰り改善ナビ」等のクラウド会計サービス事業者や、
GMO-PG等の決済サービス事業者、住信SBIネット銀行等が提供。
クラウドファクタリング
インターネット上で手続きが完結するファクタリングサービス。
AI等を活用した審査で人件費を抑え、低い手数料でファクタリングを提供。
請求書が現金化できるクラウドファクタリング「OLTA(オルタ)」など。
BtoB掛売り決済サービス
入金を早く、かつ、確実に行うために、掛売りで発生する請求業務を代行。
BtoB掛売り決済サービス「Paid(ペイド)」など。
バーンレートを減らす方法
さらに、スタートアップが余命を延ばすには
「キャッシュを増やす」ことに加え、「バーンレートを減らす」ことも重要だ。
バーンレートを減らすには、当たり前ですが、無駄な支出を減らすのが近道です。
無駄な支出を減らすには、まず会計・経理等のバックオフィスの体制を整え、
自社の状況を可視化することが重要です。
初期のベンチャーであっても月次決算をきちんと行い、
予実管理を定期的に行うことが、結果的に自社の余命を伸ばすことにつながります。(若林氏)
以上、イベントレポート前編でした。
「キャッシュを増やす」「バーンレートを減らす」とだけ言ってしまえば単純ですが、それらを実現するための方法をちゃんと知っていること、そして着実に実行することは難しいのではないでしょうか。
そしてそのような場合、若林さんのような専門家に相談できるといいのだろうなと思いました。
さて、次回は第二部「2019上場ベンチャー トークセッション」の内容をお届けします。
お楽しみに~!
※今後もPaidでは、ベンチャー企業で働く方々に役立つイベントを開催していく予定です。
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※※スライド画像はすべて第一部登壇資料より。